風雅集は、第17勅撰和歌集で20巻、総歌数2211首からなる。花園院の監修のもと、光厳院が親撰。2人の上皇が深く関わった、二十一代集の中でも特異な和歌集である。風雅集の前が玉葉集。玉葉集も風雅集も共に清新自然な風体を特色とするが、風雅集においてその純度は一層高く、繊細な自然観照と深沈な心境の描写を本領とし、南北朝の乱世に生きる人々の感慨を映している、とされる。
暮れかかる山田の早苗雨過ぎてとりあへずなくほととぎすかな
続後撰集・後鳥羽院
山の端もきえていくへのゆふ霞かすめるはては雨に成りぬる
玉葉集・伏見院
雲の上にひびくを聞けば君が名の雨をふりぬる音にぞありける
玉葉集・俊恵
寒き雨は枯野の原に降りしめて山松風の音だにもせず
風雅集・永福門院
春の色を催す雨のふるなべに枯野の草も下芽ぐむなり
風雅集・藤原為兼
このねぬる朝風寒み初雁のなく空みればこさめふりつつ
風雅集・道玄
吹きみだし野分に荒るる朝あけの色こき雲に雨こぼるなり
風雅集・花園院一条
ふけにけりゆききたえたる夜の雨くらはし川の波も音して
衆妙集・細川幽斎