天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雨のうた(5)

歌川広重の浮世絵から

 西村陽吉(本名:西村辰五郎)は出版社・東雲堂書店を経営し、石川啄木『一握の砂』『悲しき玩具』、斎藤茂吉『赤光』、北原白秋『桐の花』、若山牧水『別離』など、文学史に残る歌集を出版した人物。歌人としても活躍し、口語短歌の先駆けの一人として知られる。


  雨しぶく今朝の笹葉の寒風(さむかぜ)に頭すぼめて飛ぶ
  雀かな                北原白秋


  見上ぐれば端山(はやま)繁山(しげやま)の上の空ただに
  をぐらみ雨は降るなり         木下利玄


  庭つ鳥鶏(かけ)の鳴く音もさびしけれ日照雨(さばえ)降り
  つぐ晝のふかきに          石井直三郎


  永い永い饐ゑ腐る雨だ 地の上にも生きながら腐る人間がある
                     西村陽吉
  轟きし雨は地平に霽れゆきて夕日のなかに雲ぞかがよふ
                     山本友一
  門灯のあかりの幅にふる雨のかく飛沫(しぶき)きつつ暁に
  及ばむ                宮 柊二


  売れ残る夕刊の上石置けり雨の匂ひの立つ宵にして
                     近藤芳美
  この午後を巷にぬくき雨ふれど恋人たちはいずこにひそむ
                    岡部桂一郎