天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月のうた(2)

三日月(web「天体写真集」から)

 次には、月齢を考慮した月の歌をあげていこう。


   1日目  新月: 朔日・ついたちの月
     新月の清らなる夜ににほふ木場鮮しくしてひとり
     行きたり              平野宜紀


     かなしみを遣はんと開くる夜の窓繊きわか月西
     に傾く               木俣 修


     木琴の絶え間にはたとわれ在りて踏み越ゆみづたまり
     の新月               塚本邦雄


     罪のしるし額にありや雑踏の上の新月に顔上げて行く
                      尾崎佐永子
     新月は残映に浸りゐたりけり火の匂ふ大地昏れなんとして
                      尾崎佐永子


   3日目  三日月: 眉月、蛾眉(がび)、繊月(せんげつ)などとも言う。
     ふりさけて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも
                      大伴家持万葉集
     月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし君に逢へるかも
                      坂上郎女『万葉集
     三日月のさやにも見えず雲隠り見まくぞ欲しきうたてこのころ
                   柿本人麻呂歌集『万葉集
     生まれしは意志せぬ冒険なりしかどいま眉月の金にしたたる
                         浜田蝶二郎