月のうた(5)
居待月、寝待月、更待月 などは和歌・短歌にはそのままではあまり詠まれていないようだ。もっぱら俳句に多く現れる。
18日目 居待月: 「座って待つ月」
くらがりをともなひ上る居待月 後藤夜半
わが影の築地にひたと居待月 星野立子
蒟蒻に箸がよくゆく居待月 加藤燕雨
19日目 寝待月: 「寝て待つ月」、臥待月
熊突の話果てたる寝待月 矢島渚男
消えのこる舟屋の灯あり寝待月 松永みね子
長雨に臥待月も過ぎたりな 植村よし子
20日目 更待月: 「夜更けに出る月」
姥捨は更待月後苔ぼとけ 古沢太穂
更待の月荒涼と岬(さき)の果 宮下翠舟
23日目 下弦の月:
下弦の月おぼろに霞む湖見つつ透ける白魚生きながら食ふ
春日井荇
26日目 有明の月: 「夜明けの空に昇る月」
九月(ながつき)の有明の月夜ありつつも君が来まさば我れ
恋ひめやも 作者不詳『万葉集』
今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな
素性法師『古今集』
ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる
藤原実定『千載集』
志賀(しが)のうらや遠ざかりゆく波間よりこほりていづる
有明の月 藤原家隆『新古今集』
30日目 三十日月(みそかづき): 月の終り。