天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

風の詩情(14)

歌川広重の浮世絵から

 風の歌語について。大変多いが、代表的なもののみあげる。


 *風のたより: 風がしらせてくること。風の使者。風のつて。
   花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる
                    紀友則古今集
   さつきやみ花橘のありかをば風のつてにぞ空に知りける
                    藤原俊忠『金葉集』

 *風のやどり
   花散らす風のやどりは誰か知る我に教へよ行きて恨みむ
                       素性『古今集

 *風のなごり
   さくら花ちりぬる風のなごりには水なきそらに波ぞ立ちける
                      紀貫之古今集

 *風のしらべ: 風の音が自然にかなでる音楽的なひびき。
   松のねに風のしらべをまかせては竜田姫こそ秋は弾くらし
                     壬生忠岑後撰集

 *風をいたみ: 風がひどいので、激しいので の意味。
   須磨の海人の塩やく煙風をいたみおもはぬかたにたなびきにけり
                   よみ人しらず『古今集

 *風のむた: 風と一緒に、風に伴われの意。
   さやさやし蕎麦の花畑風のむた動くを見れば我(あ)もゆるるがに
                       島木赤彦

 *風光る: うららかな春の日光の照る中を微風が吹き渡ること。
   しんしんと立ち澄む独楽に六月の青葉の風は光りたりけり
                       植松寿樹