天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雷のうた(1/5)

稲妻

 「かみなり」は音を中心にした呼び名。「なるかみ」、「はたた神」などとも。古くは「いかづち」と言った。光を主体にする時は「いなづま」という。ちなみに「鳴る神の」は、音にかかる枕詞。
 雷は夏に多いが、春や冬にも発生し、それぞれ春雷、寒雷という呼び名がある。


  大王(おほきみ)は神にしませば天雲の雷(いかづち)の
  上に廬(いほ)りせるかも   柿本人麻呂万葉集


  雷神(なるかみ)の少(しま)し響(とよ)みてさし曇り雨も
  降らぬか君を留めむ   柿本人麻呂歌集『万葉集


  伊香保嶺(いかほね)に雷(かみ)な鳴りそねわが上(へ)には
  故(ゆゑ)はなけども子らによりてぞ
                 作者未詳『万葉集


  あふことは雲居はるかになる神の音にききつつ恋ひわたるかな
                  紀貫之古今集
  いかづちのそそきが峰の初時雨ちかくこぬまに雲消えにけり
                     大隈言道
  わが馬はしづかに草を食みゐしが遠くの雷に耳立てにけり
                     藤沢古実
  相触れて帰りきたりし日のまひる天の怒りの春雷ふるふ
                     川田 順
  春雷の夜のとどろきにゆくりなくリンカーンを想いこころぬくもる
                     山田あき
  手術台の青年が苦しむ夜を鳴れる寒雷は甘く愛撫のごとく
                     春日井建


[注]このシリーズで引用する画像は、goo検索による。