雲のうた(3)
万葉集中に引かれている「柿本人麿歌集」は、もともと万葉集成立以前の和歌集で、人麻呂が2巻に編集したものと思われているが、後世の編纂という説もある。ただ、そのうち少なからぬ歌は人麻呂自身の作と推測されている。雲の入った歌も以下のようにかなり多い(一部のみあげる)。人麿に限らないが、後の例歌で分るように万葉集では「雲居」がよく使用される。
天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
柿本人麿歌集『万葉集』
遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ歩め黒駒
柿本人麿歌集『万葉集』
天雲のたなびく山の隠(こも)りたる我が下心(したごころ)
木の葉知るらむ 柿本人麿歌集『万葉集』
ま遠くの雲居に見ゆる妹が家にいつか至らむ歩め我が駒
柿本人麿歌集『万葉集』
汝が恋ふる妹の命(みこと)は飽き足(だ)らに袖振る見えつ
雲隠(くもがく)るまで 柿本人麿歌集『万葉集』
白雲の五百重(いほへ)に隠り遠くとも宵さらず見む妹が
あたりは 柿本人麿歌集『万葉集』
香具山に雲居たなびきおほほしく相見し子らを後恋ひむかも
柿本人麿歌集『万葉集』
雲だにもしるくし立たば慰めて見つつも居らむ直(ただ)に
逢ふまでに 柿本人麿歌集『万葉集』
[注]右上の画像は、web「雲の種類と名前」 http://asukainfo.com/kumo
から借用した。