天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のうた(5)

波状雲

 「天雲の」は、雲が浮かび漂うところから、「たゆたふ」「ゆくらゆくら」「別る」などにかかる枕詞。ただし一首目と四首目の天雲は、単に空の雲の意。


  天雲の八重(やへ)雲隠(くもがく)り鳴る神の音のみにやも
  聞きわたりなむ       作者未詳『万葉集


  ひさかたの天飛ぶ雲にありてしか君をば相見むおつる日なしに
                作者未詳『万葉集
  うらぶれて物な思ひそ天雲のたゆたふ心我が思はなくに
                作者未詳『万葉集
  思ひ出でてすべなき時は天雲の奥処(おくか)も知らず恋ひ
  つつぞ居(を)る       作者未詳『万葉集


  天雲のたゆたひやすき心あらば我れをな頼めそ待たば苦しも
                作者未詳『万葉集
  君があたり見つつも居らむ生駒山雲なたなびき雨は降るとも
                作者未詳『万葉集
  夕さればみ山を去らぬ布雲(にのぐも)のあぜか絶えむと
  言ひし子ろはも       作者未詳『万葉集


[注]右上の画像は、web「雲の種類と名前」 http://asukainfo.com/kumo
   から借用した。