天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のうた(16)

横浜市東俣野の秋の空

 「白雲の」は、「たつ」「絶ゆ」に掛かる枕詞になる。大伴旅人は、筑紫の太宰府に長官として5年間ほど滞在していた。それ以前にも隼人反乱の鎮圧に九州方面には出かけたことがある。この歌は、奈良に帰ってから筑紫の方向を思いやったもの。この歌は万葉集にも載っている。



  明けばまた越ゆべき山の嶺なれや空行く月の末の白雲
                  藤原家隆新古今集
  白雲の絶え間になびく青柳の葛城山に春風ぞ吹く
                  藤原雅経『新古今集
  白雲のたなびく山の八重桜いづれを花と行きて折らまし
                  藤原師実新古今集
  神無月紅葉もしらぬ常盤木に万代かかれ嶺の白雲
                  清原元輔新古今集
  ここにありて筑紫やいづこ白雲のたなびく山の西にあるらし
                  大伴旅人新古今集
  よそにのみ見てややみなむ葛城(かづらき)や高間の山の嶺の白雲
                 読人しらず『新古今集
  花さそふ名残を雲に吹きとめてしばしはにほへ春の山風
                  藤原雅経『新古今集