天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のうた(18)

横浜市東俣野の秋の空

 以下の一連には「雲井、雲ゐ」が多く出てくるが、「井」(当て字)や「ゐ」は「居」を意味する。すでにあげたように万葉集に多くでてくる。くり返しておくと、雲のある場所、雲のたなびいている所、大空 を指す。また高く隔たった所から転じて、皇居のある所、宮中、みやこ などを指す場合も。


  東路(あづまぢ)やさやの中山さやかにも見えぬ雲ゐに世をや
  つくさむ            壬生忠岑新古今集
  わが思ひ空のけぶりとなりぬれば雲井ながらもなほ尋ねてむ
                  藤原兼通新古今集
  もらすなよ雲井の嶺の初時雨木の葉は下に色かはるとも
                  藤原良経『新古今集
  忘れじよ忘るなとだにいひてまし雲ゐの月の心ありせば
                  藤原俊成新古今集
  天つ風ふけゐの浦にゐるたづのなどか雲ゐに帰らざるべき
                  藤原清正新古今集
  雲のゐるとほ山鳥のよそにてもありとし聞けば侘びつつぞぬ
                 読人しらず『新古今集
  散る花の忘れがたみの花の雲そをだにのこせ春の山風
                  藤原良平『新古今集