雲のうた(23)
岡野弘彦は日中戦争の記憶を詠んだ。尾崎左永子は落日とその後の空の情景をリアルに詠った。岡部、菊池の作品は、分りにくい。
秋の雲ひとつ下りきてくろぐろとここの狭庭に影してゐたり
宮 柊二
赤き日は沈まんとして西空に雲あつまれるとき額を垂る
岡部桂一郎
月光にさざなみだてる横雲がしんしんとわが裡を流るる
菊池良江
秩父路に秋みちひかりきよからん秩父より来る雲をまぶしむ
上田三四二
人ゆきて多く帰らず鰯雲ながれてやまぬ東支那海
岡野弘彦
落日の荘麗ののち暗澹と雲は夕映を空に流せり
尾崎左永子
[注]右上の画像は、
「徒然ピータン・秋の雲の種類特集」
http://h-mahoroba.net/?p=1204
から借用した。