天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のうた(28)

横浜市東俣野の空

 白雲について。すでにいくつかの作品を紹介したが、追加しておく。「白雲の」は「立つた山、立ち別れ、絶ゆ、斯かる、遠(をち)」にかかる枕詞になる場合もある。


  梯立(はしたて)の倉橋山に立てる白雲見まく欲(ほ)り
  わがするなへに立てる白雲
              柿本人麻呂歌集『万葉集
  白雲の絶えにし妹を何為(あぜせ)ろと心に乗りてここば
  かなしけ           作者未詳『万葉集


  白雲をつばさに掛けてゆく雁の門田の面の友したふなり
                  西行新古今集
  吹きそめてうき秋風の声よりもたつ白雲の色ぞ身にしむ
                     深草元政
  白雲の遠(をち)べの人を思ふまも耳にひびけり谷川の音
                     島木赤彦
  白雲の往き来にちかき丘のうへ城ほろび城の石おほふ蔦
                    上田三四二


[注]深草元政: 江戸時代前期の日蓮宗の僧・漢詩人。芭蕉新井白石
   から高い評価を受けた。