天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のうた(29)

横浜市東俣野の空

 今回は青雲について。青みを帯びた灰色の雲あるいは青空を指す。「青雲の」は「出づ、出でこ」にかかる枕詞ともなる。一首目はなんとも愉快な歌である。枕詞がうまくはまっている。


  汝(な)が母に嘖(こ)られ吾は行く青雲のいで来(こ)我妹子
  (わぎもこ)相見て行かむ    作者未詳『万葉集


  伊夜彦(いやひこ)おのれ神さび青雲の棚引く日すら小雨
  そほ降る           作者未詳『万葉集


  二十年の夢よりさめて見あぐれば富士の根高し青雲の上に
                    佐佐木信綱
  蒼雲のそぐへを見れば立ち渡る春はまどかにいや遙かなり
                     長塚 節
  青雲ゆ雉子鳴き出づる 大倭(ヤマト)べは、思ひ悲しも。
  青ぐもの色              釈 迢空