天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白鳥の歌(1/9)

白鳥の群れ

 白鳥をシラトリと読めば、古くは鷺の異名。また近代のハクチョウと読めば、古名の鵠(くぐい)を差す。
 以下の万葉集歌では、「白鳥(しらとり)の」は「飛ぶ」や「鷺」を導く枕詞として使われている。つまり実景に白鳥が現れているわけではない。


  白鳥の飛羽(とば)山(やま)松の待ちつつぞわが恋ひ渡る
  この月頃を          万葉集・笠 女郎


  白鳥の鷺坂山の松陰に宿りて行かな夜もふけ行くを
               万葉集・柿本人麿歌集


次の三首の「白鳥(しらとり)」は、特定の鳥ではなく、単に白い鳥を意味していると理解したい。八田知紀は、幕末・維新の鹿児島藩士で歌人


  白鳥(しらとり)のかげこそ見えねみつるぎのさやかに跡は
  残りけるかな             八田知紀


  白鳥(しらとり)はかなしからずや空の青海のあをにも染まず
  ただよふ               若山牧水


  海の声そらにまよへり春の日のその声のなかに白鳥(しらとり)
  の浮く                若山牧水


[注]右上の写真は、次の「水鳥達の写真」から借用した。
http://big-swan.com/category/%E7%99%BD%E9%B3%A5%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F/