天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白鳥の歌(4/9)

助走

 道浦母都子の歌は初々しい相聞である。青井史はテレビのカメラアングルを感じさせる。岡井隆の歌は比喩なので、これだけでは分らない。小池光『鑑賞・現代短歌 岡井隆』には、「建国間もない中華人民共和国であり、アジア民衆のかがやかしい民族解放闘争」のことと解説がある。


  餌(えさ)をまくひとりにつきて白鳥の頸にうねりの揃ふ
  さびしさ             春日真木子


  渤海のかなた瀕死の白鳥を呼び出しており電話口まで
                    岡井 隆
  雪おほふ山脈を背に翔びきたり湖に下り立つ白鳥三
                    来嶋靖夫
  白鳥の来しこと告げて書く手紙遠き一人に心開きて
                   道浦母都子
  首のべて白鳥は翔ぶ午さがり東北線をくだる抒情よ
                    小中英之
  みづうみを傾けていつせいに翔ちてゆく春の白鳥の
  はばたき重し            青井 史


  うしろより首を抱きてひたにひたに白鳥の頸を洗ひ
  たかりき              坂井修一


[注]右上の写真は、次の「水鳥達の写真」から借用した。
http://big-swan.com/category/%E7%99%BD%E9%B3%A5%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F/