天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

採茶庵跡

左手方向が「芭蕉俳句の散歩道」

 隅田川小名木川が合流する地点に芭蕉が住んだという庵跡があり、その近くの芭蕉記念館には寄ったことがある。先日、「短歌人」の東京歌会が芭蕉記念館で開催されたついでに、今まで気付かなかった採茶庵跡を見て来た。(採茶庵跡の画像は、2016-09-08 雲のうた(14)―芭蕉― に掲示してあります。)
 採茶庵は、芭蕉の門人・杉山杉風(さんぷう)の別宅であった。芭蕉は「奥の細道」の旅に出る前に、それまで住んでいた芭蕉庵を手放し、採茶庵に移った。現在の仙台堀川の海辺橋のたもとにあったようだ。芭蕉は、元禄2年(1689年)5月16日仙台堀川の土手から船で出発した。隅田川を遡り千住まで行き、そこから日光街道をたどった。
 この川辺の散策路(芭蕉俳句の散歩道)沿いに、芭蕉が「奥の細道」の旅先で詠んだ有名な十八句が立札で掲示してある。以下に全部をあげておく。


     草の戸も住替る代ぞひなの家  (深川にて)
     行春や鳥啼魚の目は泪     (千住にて)
     あらとうと青葉若葉の日の光  (日光にた) 
     野を横に馬牽むけよほととぎす (那須にて)
     早苗とる手もとや昔しのぶ摺  (福島にて)
     桜より松は二木を三月越し   (岩沼にて)
     夏草や兵どもが夢の跡     (平泉にて)
     五月雨の降りのこしてや光堂  (中尊寺にて)
     閑さや岩にしみ入る蝉の声   (立石寺にて)
     五月雨をあつめて早し最上川  (大石田にて)
     象潟や雨に西施がねぶの花   (象潟にて)
     荒海や佐渡によこたふ天河   (出雲崎にて)
     わせの香や分入右は有磯海   (倶梨伽羅峠にて)
     寂しさや須磨にかちたる浜の秋 (色の浜にて)
     山中や菊はたおらぬ湯の匂   (山中にて)
     名月や北国日和定なき     (敦賀にて)
     石山の石より白し秋の風    (小松にて)
     蛤のふたみにわかれ行秋ぞ   (大垣にて)