わが歌枕―五十鈴川
伊勢神宮の内宮境内を流れている御手洗の川で御裳濯川(みもすそがわ)ともいう。「神」「千歳」「万代」などの語とともに詠まれた。悠久の清流を天皇の御代に譬えたりもした。
宮柱下つ岩根の五十鈴川よろづ代すまむ末ぞはるけき
藤原俊成『五社百首』
神風や五十鈴の川の宮柱幾千代すめと立てはじめけむ
藤原俊成『新古今集』
万代に君もすめとやいすず川したつ岩ねのしきなみのこゑ
藤原家隆『壬二集』
君が代は久しかるべしわたらひや五十鈴の川の流れ絶えせで
大江匡房『新古今集』
おちたぎし瀬の音きよき五十鈴川心のちりもそそぎはててき
海量
香りなき風邪の後にて此の朝の五十鈴の川の海苔(のり)も
さびしも 土屋文明
五十鈴川水面に靄の立ち込めて神話の御代にいざなはれけり