天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌枕―小倉山(1/2)

二尊院裏山からの眺望

 保津川渓谷の出口近くの東岸の山で、大堰川を挟んで嵐山に対する。標高 293m。古来紅葉の名所。東麓には二尊院祇王寺,落柿舎 などがある。
二尊院の裏山にある藤原定家の時雨亭跡から京都市内を見渡した風景が右の写真である。


  夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜(こよひ)は鳴かずい寝
  にけらしも           舒明天皇万葉集


  夕月夜小倉の山に泣く鹿の声のうちにや秋は暮るらむ
                  紀 貫之『古今集
  小倉山峰のもみぢば心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ
                  藤原忠平拾遺集
  小倉山ふもとの里に木の葉散れば梢に晴るる月を見るかな
                   西行新古今集
  限りあればいかがは色のまさるべきあかずしぐるる小倉山かな
                   西行『新勅撰集』
  小倉山しぐるるころの朝な朝なきのふはうすきよもの紅葉ば
                 藤原定家『拾遺愚草』
  久かたの月おしてれり小くら山秋より外の名にこそ有りけれ
                     熊谷直好


  小倉山ふもとにありし山荘に住みて選歌の藤原定家
  小倉山もみぢを愛でてこもりけむ歌詠むために西行、定家