天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌枕―三保浦

三保の松原にて

 現在の静岡県清水市清見潟から清水港をへて三保の岬に至る湾曲海岸をさす。風土記の伝える羽衣説話で知られる。現在の羽衣の松は三代目という。羽衣の松は御穂神社の神体とされている。近くの御穂神社には羽衣の切れ端といわれるものが保存されているというから面白い。次のような感動的な実話もある(説明の案内板から)。
 フランスのダンサー、エレーヌ・ジュグラリスは、「羽衣伝説」に惹かれて、作品「羽衣」を発表、彼女は来日して伝説の三保の松原を訪れることを希望していたが、病気により35歳の若さで亡くなる。臨終の際に、夫に「せめて髪と衣装だけは三保の松原に」と遺言を残した。それを叶えるため、夫は彼女の衣装と遺髪を持って来日した。この話に感動した地域住民により、昭和27年に「エレーヌの碑(羽衣の碑)」が建てられた。その碑の袂には彼女の遺髪が納められている。


  廬(いほ)原(はら)の清見の崎の三保の浦のゆたけき見つつ
  物思ひもなし          田口益人『万葉集


  風早(かざはや)の三穂の浦廻(うらみ)を漕ぐ舟の舟人さわく
  波立つらしも          作者未詳『万葉集


  清見潟富士の煙や消えぬらむ月影磨く三保の浦浪
                  後鳥羽院玉葉集』


なお、丹後地方にも三保の浦という歌枕があったらしい。


  三保の浦の引網の綱のたぐれども長きは春の一日なりけり
                  曾禰好忠『曾丹集』
  三保の海のうらみにぞゆくたづねずは三輪の山辺のさもたたじとて
               和泉式部和泉式部続集』


  羽衣の松の世代も替るなり風雨に耐へて幹も曲がれる