今回は太陽系の惑星である火星、木星を詠んだ歌をとり上げる。最初の塚本の歌の「熒惑星(けいこくせい)」は、火星の異名で、和名のもっとも古いもの。聖徳太子の説話を扱った『扶桑略記』,『聖徳太子伝暦』にでてくるという。
熒惑星(けいこくせい)を水に隕とせし誰がうたぞわれより
こゑ清きほととぎす 塚本邦雄
久々の出逢ひなるべし満月に寄り添ふ如く火星は冴ゆる
平井軍治
火星炎えゐる夜となりたりわれは未知の女のやうに髪
洗ひ立つ 雨宮雅子
窓に木星かすかに光る服ぬぎて背の銃痕たちまち寒し
浜田 到
木星の真下に君の家ありと螢橋越えて漕ぎし自転車
大崎瀬都