天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時間を詠む(9)

銀河中心のブラックホール(想像図)

 物理学における時間の定義は大変難しい。ニュートンは、時間は過去から未来へとどの場所でも常に等しく進むものとした。絶対時間である。ニュートン力学においては時間は全宇宙で同一とされた。ところが後のアインシュタイン相対性理論により、これが崩れた。つまり、ある慣性系から見て空間上の異なる地点で同時に起きた事象は、異なる慣性系から見ると同時に起きてはいない(「同時性の崩れ」)、ということになったのである。


  この星に過ぎる時間の先端の一分間を黙禱してゐる
                    香川ヒサ
  眠る時間約(つづ)めてわれは学びをり学べばかすかに
  湧きくる希望            吉村睦人


  伸びちぢみするは〈時間〉の相(すがた)にて島梟(しま
  ふくろう)は樹の上に鳴く      岡部桂一郎


  白壁に影現れて人不意に時間の中を歩み始めつ
                  井谷まさみち
  ひろげたる鳥の翼や吸われゆく時間というはつね無音なり
                    西潟弘子
  打つ守る時間の幅の伸び縮みテレビのなかに身は遊弋
  (ゆうよく)す            石本隆一


  水晶橋 雨後(うご)を渡れば逢うという時間の中を
  生きし日のごと          道浦母都子