天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

俳句―取合せ論(4/5)

法隆寺(webから)

 取合せ句を具体的に解析する方法を考えてみよう。一句の中から
  1.季語  2.取合せ語  3.連結語(とりはやし)
を見分けることである。例をあげる。
     古池や蛙飛こむ水のおと       芭蕉
  1.季語=蛙  2.取合せ語=古池
  3.連結語=飛こむ水のおと

     柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺     子規
  1.季語=柿  2.取合せ語=法隆寺
  3.連結語=くへば鐘が鳴る

これらの句では、季語と取合せ語を結び付ける連結語(とりはやし)が句中に明示されているので理解は容易である。ところが読者の情景認識・想像力を前提にして、連結語が省略された句も多い。
     菜の花や月は東に日は西に      蕪村
  1.季語=菜の花   2.取合せ語=月は東に日は西に
  3.連結語=省略 

     しぐるるや駅に西口東口      安住敦
  1.季語=しぐるる  2.取合せ語=駅に西口東口
  3.連結語=省略   

これらの句では、それぞれの季節で読者が見かけたあるいは容易に理解できる情景が暗黙裡に連結語の役割を果たしている。