天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

探梅―横浜三渓園

茶筅塚(三渓園にて)

 2月になると神奈川県でも梅の名所は見ごろになる。今年も横浜の三渓園に出かけた。桜の花見と違って、梅の花を見に来る人は老人たちが主体である。梅の場合には、梅林と呼ばれるほどに梅の木が立てこんでいないと派手さが出ない。
 南門から入って、内苑、外苑、三渓記念館、古民家、横笛庵、旧燈明寺三重塔、大池 を巡って正門から出た。
内苑の天授院、月華殿は木造故に年月に晒されてかなり衰えて見えた。三渓記念館ではこの季節に合うような書画や襖絵などが展示されていたが、分野に疎いので観賞はできない。外苑の松風閣からは遠く雪を被った新春の富士山が眺められた。大池には、枯れた蓮や葦などはなく鴨達の姿も少なかった。

     立春の日射しにねむる電車かな
     木造に経にし年月梅の花
     立春や背筋のばせる観世音
     古民家の藁屋根に生ふ薺かな
     梅の香の枝を映せり茶筅 
     探梅の帰りに買ひぬ恵方巻


  草蔭にねむりこけたる石地蔵声をかけむか今日は立春
  顔撫づる人もあるらし鼻擦れて姿勢正しき出世観音
  パン屑を投ぐれば拾ふアヲサギは魚獲ることを止めて佇む
  さはがしく餌に寄り来し鴨のむれ去りて静まる芦刈小舟
  たのまれてスマホに撮りぬ立春の富士を背にせる外つ国の人