天空のうた(1)
「天」: 「あま」と読み、ひろびろとした大空を意味する。
「あ(開)」と「ま(間)」からなる。「あめ」は音転。
「空」: 語源は「うち」に対する「そと」からきた言葉。
「うちら」に対して「そとら」の言い方があり、
「そとら」から「と」を略して地上に対する上の方を
指す語「そら」になった、という。また何も無い状態の
「虚」を意味するようにもなった。空虚。
空を天の意味で使ったり、熟語として天の熟語よりも空の熟語の方が多いので、天の歌よりも空の歌の方がはるかに多いようである。
一首目は、仁徳天皇が女鳥王に求婚する際に、女鳥王が弟の速総別(はやぶさわけ)に天皇をやっつけてしまいなさい、とけしかけている歌。「さざき」はミソサザイの古名で、ここでは天皇を指す。
雲雀(ひばり)は天(あめ)に翔る高行くや速総別(はやぶさわけ)
さざき取らさね 古事記・歌謡
ひさかたの天(あま)ゆく月を網に刺しわご大王はきぬがさにせり
柿本人麿『万葉集』
ひさかたの天見るごとく仰ぎ見し皇子(みこ)の御門(みかど)の
荒れまく惜しも 柿本人麿『万葉集』
行き行きて逢はぬ妹ゆゑひさかたの天の露霜に濡れにけるかも
柿本人麿歌集『万葉集』
大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し
柿本人麿歌集『万葉集』
君が行く道の長てを繰り畳ね焼き亡ぼさむ天の火もがも
狭野茅上娘子『万葉集』