天空のうた(2)
分り易くするために、それぞれの歌の語注を*の部分に書いておくが、少々煩わしいか。
み空行く雲も使(つかひ)と人は言へど家づと遣(や)らむ
たづき知らずも 大伴家持『万葉集』
*たづき: 手段、方法。
み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる
安都扉娘子『万葉集』
天(あめ)にますつくよみをとこまひはせむ今夜の長さ
五百夜(いほよ)継ぎこそ 湯原王『万葉集』
*つくよみをとこ(月読壮士): 月のこと。
[参考]前衛短歌の塚本邦雄は、この形をよく用いた。
まひはせむ: お供え物をしましょう。
五百夜: いつまでも長く続く夜
うらさぶる情(こころ)さまねしひさかたの天(あめ)のしぐれの
流らふ見れば 長田王『万葉集』
*うらさぶる: 侘しい。こころさまねし: 心を満たすことだ。
はなはだも降らぬ雪ゆゑこちたくも天つみ空は雲らひにつつ
作者未詳『万葉集』
*はなはだも: それほどでもないのに。こちたくも: ずいぶんと
立ちて居てたどきも知らず我が心天つ空なり地(つち)は踏めども
作者未詳『万葉集』
*たどきも知らず: どうしていいかわからない。