天空のうた(4)
三首目の意味は、「 行ったり来たりして、ただうわの空で過ごしているのは、私のいる山の風当たりが強いからだよ」となる。我が身を雲に喩え、妻の家を山に、女の気の強さを風の激しさになぞらえている。
小夜ふけて天の門渡る月影にあかずも君をあひ見つるかな
読人知らず 『古今集』
秋風に声を帆にあげてくる舟は天の門渡る雁にぞありける
藤原菅根 『古今集』
行きかへり空にのみしてふることは我がゐる山の風はやみなり
在原業平『古今集』
ゆふぐれは雲のはたてにものぞ思ふ天つ空なる人をこふとて
読人知らず 『古今集』
ふる里の花の盛りは過ぎぬれど面影去らぬ春の空かな
源 経信『新古今集』
忘れじな難波の秋の夜半の空こと浦に澄む月は見るとも
宜秋門院丹後『新古今集』