天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

天空のうた(6)

三笠山(webから)

 西行の歌は、他の情景歌と比べると心情が濃くにじむ。西行の特徴がよく出ている。末尾は神祇歌。よって三笠の山に榊葉を挿し始めたのは神である。


  雲にうつる日影の色もうすくなりぬ花の光の夕ばえの空
                  藤原為顕『玉葉集』
  野も山もひとつにしらむ雪の色にうす雲くらきあさあけの空
                  藤原実兼『風雅集』
  つねよりも心細くぞ思ほゆる旅の空にて年の暮るれば
                    西行山家集
  ながむればかすめる空の浮雲とひとつになりぬ帰るかりがね
                藤原良経『千載和歌集
  天つ空ひとつに見ゆる越の海の波を分けても帰るかりがね
                源 頼政千載和歌集
  あめのしたのどけかれとや榊葉を三笠の山にさしはじめけん
                藤原清輔『千載和歌集