天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蟾蜍(ひきがえる)(3/3)

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 蝦蟇(がま)の油という傷薬がある。江戸時代に用いられていたワセリンなどを成分とする軟膏である。筑波山の名物になったが、それには歴史的由来がある。大坂の陣に徳川方として従軍した筑波山・中禅寺の住職・光誉上人が持っていた陣中薬の効果が評判になったという話である。

     蟇蛙長子家去る由もなし        中村草田男
     かぐはしき大地を割つて蟇(ひきがえる)  長谷川櫂


  啓蟄の穴出でて轢かれたる蟇の大いなる肉や赤かりにけり
                     田井安曇
  蟇とする春の日なかの睨み合ひやつぱり人間わが方の負け
                     土屋正夫
  らちもなきことと嗤(わら)はるわが庭に年とる蝦蟇(がま)の
  孤独を言へば
                     仲 宗角
  ひきがへるやくちなはが居てその向うに広大な無が寝てゐた昔
                     岡井 隆
  あなたにも不思議な水を上げませうやはやはと鳴く蟇が生れます
                     箕原和子
  食卓にひきがへるのごとむつつりと膨れてをればわれは父おや
                     小池 光