天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海のうた(3)

荒海(江ノ島にて)

 二首目の歌は、激しい恋心を風に荒れ狂う海のしきりに寄せる浪に譬えたもの。三首目は、法華経二十八品歌の中の提婆品の内容について詠んだもので、提婆品には竜女が海底から来たって男に変じて出家したという。


  わたの原漕ぎ出でて見れば久方の雲ゐにまがふ沖つ白波
                  藤原忠道『詞花集』
  わが恋は荒磯の海の風をいたみしきりに寄する波のまもなし
                   伊勢『新古今集
  わたつ海の底より来つる程もなくこの身ながらに身をぞ極むる
                 藤原忠通新古今集
  山はさけ海はあせなむ世なりとも君に二心わがあらめやも
                  源実朝『新勅撰集』
  夕暮はみなともそことしらすげの入海かけてかすむ松原
                   宗良親王
  島山はつもるも見えずかきくれて友船しろき雪のうなばら
                   本居宣長
  日の入りて昏(くら)くなりゆけば自から海の心は荒れむとすらむ
                   石榑千亦