「現代俳句の笑い」シリーズ
これから開始する「現代俳句の笑い」シリーズについて、以下に趣旨を述べておきたい。
わが所属の「古志」で、2014年2月号に発表した評論「スミレと薺」において、川崎展宏の俳句につき体系的な分析を行った。最近、復本一郎『江戸俳句百の笑い』(コールサック社)を読んで、改めて現代俳句における笑いを、レトリックの面からまとめてみたくなった。現代俳句の典型として川崎展宏の全句集『春』を対象とする。川崎展宏の経歴を知れば、これに異存はないと思われる。シリーズの内容は、先の評論の内容と一部重複する場合もあるが、新しい例や発見につき解説したい。
予め注意しておくこととして、わずか十七文字しかない最短詩型の俳句と多くの言葉を使える小説や漫談とでは、笑いのレトリックはおのずと異なってくる。前者の繊細なレトリックは大規模な後者のレトリックに包含されてしている。笑いに関する一般の日本語のレトリックについては、中村 明『笑いのセンス』 岩波現代文庫 が参考になる。これは小説などに使用された笑いのレトリックが主体になっている。
このシリーズでとり上げる俳句の主たる笑いのレトリックとして、以下のものを考えている。
*オノマトペ *俗語・口語 *雅俗混交 *リフレイン *擬人法
*本歌取り・パロディ *誇張表現 *深い切れ *掛詞・枕詞
*折句 *比喩 *現代風素材 等(順不同)。