天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

天空のうた(12)

ゆきあいの空(webから)

 三首目の「玉鉾の」は、[枕]「道」「里」にかかる枕詞。慈円の歌は、「夏衣かたへ涼しく」とか「夜や更けぬらむ」とか、少々理屈っぽい。「ゆきあひの空」とは、夏と秋とが入れ換わる空のこと。


  やまふかみ猶かげさむし春の月そらかきくもり雪は降りつつ
                     越前『新古今集
  花は散りそのいろとなく眺むればむなしき空に春雨ぞふる
                  式子内親王新古今集
  玉鉾のみち行く人のことづても絶えてほどふる五月雨のそら
                   藤原定家新古今集
  いかにせむ来ぬ夜あまたの郭公(ほととぎす)またじとおもへば
  村雨のそら            藤原家隆新古今集


  夏衣かたへ涼しくなりぬなり夜や更けぬらむゆきあひの空
                     慈円新古今集
  思ひあまりそなたの空をながむればかすみを分けて春雨ぞふる
                   藤原俊成新古今集