天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海のうた(11)

八丈島の海

五首目の上句が分る人は、現在どれくらいいるだろうか。地面と平行にハンドルからサドルまで一直線のパイプが通っている自転車は、横から眺めると構造材が三角形をしている。背の低い子供では、サドルに座ることはできないので、この三角形の空間に片足を通して、少し斜めになってペダルを漕いだ。これが「三角漕ぎ」。


  空壜が立ちおよぐ海の昏れがたにわれの心のさだまりがたき
                     志垣澄幸
  若き日に船乗りの君を羨しみき老いて対へば海のみ青し
                     小島 清
  あなたとの對話よりしづかに聲だけを消せば海湛へくる空間があり
                     浜田 到
  わが顔が音なく潜りわが前に浮びあがるまでの間にある海よ
                     浜田 到
  自転車を三角漕ぎに 乗りゆきて、われらは見たり。海と汽車とを
                     中井昌一
  タラップを降りるや忽ち海からの秋風強し八丈空港
                     神作光一
  白米(しらよね)の千枚棚田に稲そよぎ曲線模様が海と照り合う
                    影山美智子