川のうた(3)
以下の一連は、作者の立ち位置がよくわかる自然詠である。
若山牧水は大正15年に北海道から東北地方に旅をした。その折に「幾山川 こえさり行かば 寂しさの はてなむ國ぞ けふも旅ゆく」という後に有名になる歌を詠んでいる。
中高にうねり流るる出水河(でみづがは)最上の空は
秋ぐもりせり 若山牧水
川隅の椎の木かげの合歓の花にほひさゆらぐ上げ潮の風に
古泉千樫
山いでて河やや浅みおのづから瀬に立つ水の声きこゆなり
太田水穂
名も知らぬ川なれど海に入る処(ところ)は何かゆたけくて
我を佇(た)たしむ 川田 順
まんまんとおもくくもれる夕べの川にぶく時なくわが前にうごく
木下利言
国境(くにさか)をここに越ゆればあはれなるかな北に向はむ
川発(おこ)るなり 吉野秀雄
うち寄する波にしばらく競ふとも海に入る川つひにゆたけく
柴生田稔