天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川のうた(8)

汚染の川

武川忠一の作品はいずれも汚染された川を詠んでいる。河川の水質汚染の原因としては、先ず第一に生活排水がある。河川をゴミ捨て場にしていた、という経験もある。有機物や窒素、リンなどを含む生活排水は大量に出て来る。近年では、国や自治体の努力により、河川に鮎や鮭が遡上するまでに浄化されている。


  瀬音あげ流るる川に沿ひゆけば水のよろこび人の歓び
                  草野源一郎
  どぶ川の臭う川水夕空のうす紅(くらない)を映してうごく
                   武川忠一
  よどみいる川の濁りに降るしぐれ生き生きとして白き雨足
                   武川忠一
  油浮く川は臭いて流れゆく笹舟浮べ子は遊べども
                   武川忠一
  夕映えは川を飾りて雲よりも微妙の色に水を染めたり
                   森本治吉
  椅子ひとつ水にすわれりうつうつと梅雨降りこむる川の中州に
                   高安国世
  人間のつくりし国境かなしけれ川の流れも雲の流れも
                   青山 兟