川のうた(10)
佐藤佐太郎が日々あゆんだ遊歩道は、世田谷区にある蛇崩川緑道である。蛇崩川は、かつては大変な暴れ川で、谷も深く両岸を深く浸蝕しそこに土砂が崩れていたという。昭和48年に暗渠化工事が完成し、この川が散歩道に変わった。
運河は船舶の航行のために人工的に開削された水路。国際的にはスエズ運河,パナマ運河などが有名。日本にも港湾都市には小樽運河のような例がある。春日井建の歌はどこの情景だろう。
まろき石ひらたき石がかげをなす わが愉安のふゆのかははら
轟 太市
瓦礫など見つつきたりておもほへず川ながれをり藍のしづまり
大野誠夫
雪山をいでて清き川氷河よりいでて濁る川高原の中
佐藤佐太郎
日々あゆむ遊歩道にて川音の近く聞こゆる風の日のあり
佐藤佐太郎
点滅のネオンは川にちらばりて朱の音となる冬のせせらぎ
川口常孝
うちつけに大運河ふりむけば小運河黒き喪の舟はわれを誘ふ
春日井 建
さらさらと川は流れて石のみがじっと止っておりにけるかも
山崎方代