天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さまざまな直喩(4/13)

つばくら

次に十三人の俳句に現れた39種の表現につき、それぞれ一句ずつ例をあげる。直喩表現の語を傍線で示す。但し、「なりに、―に」については二句あげる。


     山眠る如く机にもたれけり           虚子
     夏山の洗うたやうな日の出哉          一茶
     狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉       芭蕉
     故郷(くに)めく町山水めきし井戸清水     草田男
     乙鳥(つばくら)や水田の風に吹かれ皃(がほ)   蕪村
     臼程の月が出たとや時鳥            一茶
     山深きところのさまに菊人形         草田男
     蠓(まくなぎ)を泣かむばかりにうちはらひ    誓子
     抜け目なささうな鴨の目目目目目目       展宏
     かざすだに面はゆげなる扇子哉         漱石
     春の風おまんが布のなりに吹(ふく)       一茶
     大の字に寝て涼しさよ淋しさよ         一茶
     亢(かう)として柚味噌(ゆみそ)静かや膳の上  龍之介
     虫売(むしうり)のかごとがましき朝寝哉     蕪村
     夏野の道風のかたちの娘達           展宏
     秋海棠西瓜(すいくわ)の色に咲きにけり     芭蕉
     葉ざくらに類(たぐ)ふ樹も見ゆ山路哉      蕪村
     襟にふく風あたらしきここちかな        蕪村