天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さまざまな直喩(5/13)

ヒキガエル

     噴煙の古綿為すに夏日透く        草田男
     さながらに河原蓬は木となりぬ      草田男
     ゆく春やおもたき琵琶の抱(だき)心     蕪村
     堀川の螢や鍛冶(かぢ)が火かとこそ     蕪村
     木母寺(もくぼじ)の鉦の真似してなく水鶏  一茶
     簀戸はめて柱も細き思ひかな        虚子
     土用波木枕じみし家そこばく       草田男
     雪を吐く口つきしたり引蟇(ひきがへる)   一茶
     三椀の雑煮かゆるや長者ぶり        蕪村
     うぐひすのあちこちとするや小家がち    蕪村
     刈萱の風より雨を待つふぜい        展宏
     ふとんきて達磨もどきに居(すわ)りけり   一茶
     夏の雲朝からだるう見えにけり       一茶
     乾鮭(からざけ)ものぼるけしきや冬木立   蕪村
     夏山の膏(あぶら)ぎつたる月よ哉      一茶
     奈良の町昔くさしや朧月          子規
     寂寞(じやくまく)と昼間を鮓のなれ加減   蕪村
     夏鷹過ぎぬ羽音自ら聴(き)く眼して    草田男
     掌篇的な店へ絵慕ひ夏の蝶        草田男
     春の筆かなしきまでに細かりし       裕明
     帰り花たとへば月の穢と言へり       裕明
     葭切のむかしごゑなる没日かな       裕明