天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

霊魂のうた(1)

筑波山

霊魂とは、肉体と独立に人間の精神的・生理的諸活動を支配しかつその原動力と考えられている精神的実体。未開民族は夢・幻・死などから,肉体とは別の霊的存在を信じ,それは自由に肉体を遊離・出入し得るとする。[百科事典マイペディアの解説]
一首目は、心が通えば二人は共寝をするのだが、鹿や猪が荒らす田を見張るように、母が二人を見張っているよ、の意味。二首目も似たような状況で、筑波嶺のあちらこちらに番人を置いて母は私を監視するが、二人の心は相通じてしまった。三首目は、あなたを思うあまり、私の魂が体をぬけ出してあなたの所へ行ったのでしょう。深夜(の夢)に見えたならその魂を結びとめるおまじないをして下さい。


  魂合(あ)はば相寝(ね)むものを小山田の鹿猪田(ししだ)
  禁(も)る如(ごと)母し守(も)らすも
                  万葉集・作者未詳
  筑波嶺の彼面(をても)此面(このも)に守部(もりべ)据ゑ母い
  守(も)れども魂そ逢ひにける     万葉集・東歌


  思ひあまりて出でにし魂のあるならん夜ふかく見えば魂むすびせよ
                      伊勢物語
  夏虫の身をたきすてて魂しあらば我とまねばむ人めもる身ぞ
                 後撰集・読人しらず
  嘆きわび空にみだるる我がたまを結びとどめよしたがひのつま
                    源氏物語「葵」
  我が魂の通ふばかりの道もがな惑はむ程に君をだに見む
                     和泉式部
  もの思へばさはの蛍もわが身よりあくがれ出づる玉がとぞ見る
                 後拾遺集和泉式部
  国のためいのちをすてしますらをのたままつるべきときちかづきぬ
                      明治天皇