天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

霊魂のうた(8)

あめんぼ(webから)

以下の一連では、肉体を離れた魂を詠んでいる。自分のものか他人のものか、もはや区別をつけがたい。岡野弘彦の歌の下句の直喩は、すこやかに感じられて好感が持てる。喜多弘樹の魂と対照的。


  たましひは自然(じねん) 自在にゆらぎいで あめんぼのごとく
  水の上ゆく              岡野弘彦


  癒されぬこのたましひを蹴りあげてひとつ星座となりゆくしじま
                     喜多弘樹
  雲在りて空の深さが沁みてくるいまは何処にわが魂遊ぶ
                     高瀬隆和
  満開の夜桜の下に立ちてよりたましひ何時もざわめきやまず
                     郷原艸夫
  自らの霊(たま)をかすかに嗅ぐごとき夜の白罌粟のかたはらをすぐ
                    犬飼志げの
  地の霊にはぐくまれたるおのれよと土舞ふ中に身を佇(た)たしむる
                     石川一成
  古電球あまた捨てきぬ裏の崖ゆきどころなき霊も来ていし
                     伊藤一彦
  こまやかに光満ちゐる水の上(へ)をかげなく過ぐる霊は旅人
                     伊藤一彦