霊魂のうた(9)
夕空に枝ひろげたる裸木に祖霊降(お)りくるごとき風花
秋元千恵子
み霊会ふ親子三人か比企の丘に一つの石に名前を並ぶ
徳山高明
夫の魂さまよふならば夕暮れの草生に坐せるわれの辺に来よ
和田美代子
たましひのあかるくあれば象印魔法瓶こそ容(い)るるによけれ
小池 光
すりきれし皮の鞄に愛着す我がたましひのあらばこのあたり
森山晴美
針と針すれちがふとき幽(かす)かなるためらひありて時計のたましひ
水原紫苑
いちまひの桔梗の皿を洗ひつつたましひに似る吾が手ありけり
河野愛子
たましいを預けるように梨を置く冷蔵庫あさく闇をふふみて
島田幸典
一首目、二首目は分かりやすい。三首目は、男にとって癒される歌であろう。小池 光や水原紫苑の感性は独特に思える。水原の歌における針と時計は暗喩として解釈する。島田幸典の上句の直喩は、よくわかるような気がする。
[注]このシリーズは、手元の資料が完了したため、今回で一旦終了とします。
いつの日か新しい資料が整い次第、再開したいと思っています。