Dr.Ryuの場合(6/8)
ところがである。またまた岡井は家庭生活に悩み始める。C女との関係が危うくなる。
ふたりともふかく疲れてもの思ふ葦の小舟のただよふがまま
『親和力』
鍋かこみて肉食みあへど手ふるればすぐばらばらになる家族店(だな)
『神の仕事場』
ついに平成二年十二月、東京都三鷹市下連雀に仕事部屋を借りた。以後、岡井の生活の中心になっていく。三度目の家出というべきか。ただ、C女が病気になった時には、豊橋に帰って面倒をみた。
朝食はみどりさやけくけはしかる面輪のうへに精気(エーテル)が見ゆ
『夢と同じもの』
ゆりかごを出でたる鳥が立ち騒(さや)ぐ吾れのめぐりに涙落ちたり
『わが告白』には、「わたしはその回復するまで、子供たちを見ながら彼女につき添ったが、大丈夫とみて立ち去ったのであった。そのとき長男十九歳、次男十六歳、長女十三歳だが、ふしぎに子供たちの立ち居の記憶はうすい。ただ長女が、母親の枕元にじっと座っていたのが忘れられない。」とある。
言ひがたくつらき対決のこゑありし時空の熱も徐々にうすれむ
『ウランと白鳥』
弁護士に会ひて帰り来ぬ太陽のかくれ果てたる冬の曇り日
『ヴォツェック/海と陸』
家族と別れた後も、折りに触れて子供たちの相談にのり、長女の結婚まで経済的な面倒をみたのであった。