色を詠む(2/4)
秋吹くはいかなる色の風なれば身にしむばかりあはれなるらむ
和泉式部
知られじとそこら霞の隔てしに尋ねて花の色は見てしを
和泉式部
梅の花香はことごとに匂はねどうすく濃くこそ色は咲きけれ
後拾遺集・清原元輔
あさみどりみだれてなびく青柳のいろにぞ春のかぜも見えける
後拾遺集・藤原元真
見せばやな雄島の蜑(あま)の袖だにも濡れにぞぬれし色はかはらず
千載集・院富門院大輔
わりなしや思ふ心の色ならばこれぞそれとも見せましものを
千載集・前斎宮河内
ころも手におつる涙のいろなくば露とも人にいはましものを
千載集・二条院内侍参河
後拾遺集のふたり以外は女性歌人であり、作品はみな心が苦しくなる恋歌である。
和泉式部は帥宮(そちのみや)・敦道親王と溺愛関係になり、二人とも本来の家庭を台無しにしたことで知られる。
院富門院大輔は俊恵の歌林苑の一員で、西行らと交流した。多作ぶりから「千首大輔」とよばれ,「千載和歌集」以下の勅撰集に63首がとられている。