色を詠む(3/4)
色にのみそみし心のくやしきを空しと説ける法のうれしさ
新古今集・小侍従
桜咲くとほやま鳥のしだり尾のながながし日もあかぬ色かな
新古今集・後鳥羽院
いろかはる萩のした葉を見てもまづ人の心の秋ぞ知らるる
新古今集・相模
野辺の露はいろもなくてやこぼれつる袖より過ぐる荻の上かぜ
新古今集・慈円
吹くかぜの色こそ見えね高砂のをのへの松に秋は来にけり
新古今集・藤原秀能
そでにおく露をばつゆと忍べどもなれ行く月やいろを知るらむ
新古今集・源通具
塚古ききつねのかれる色よりも深きまどひに染むる心よ
藤原定家
一首目: 小侍従は平安末期・鎌倉初期の歌人。
「待つ宵にふけゆく鐘の声きけばあかぬ別れのとりはものかは」という
秀歌で知られ,「待宵の小侍従」と称された。掲出の歌の意味は、「形あるものだけにとらわれてきて悔やまれるけれど、 そんなものは空しいと説く教えの嬉しいことよ。」
四首目: 物思いにたえずおちる紅涙と対照して歌ったもので、野辺の露はどうして色がないのかと訝る。