天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

色を詠む(4/4)

  消えぬともあさぢが上の露しあらばなほ思ひおく色や残らむ
                   新勅撰集・藤原雅経
  むら雀声する竹にうつる日の影こそ秋の色になりぬれ
                    風雅集・永福門院
  目にかけて暮れぬといそぐ山本の松の夕日の色ぞすくなき
                    風雅集・藤原為兼
  見わたせば心は色もなかりけり柳桜の春の曙
                    黄葉集・烏丸光広
  春まひる向つ山腹に猛る火の火中(ほなか)に生(あ)るるいろの清(さや)けさ
                        北原白秋
  さ芽だちのみどりのいろひ にほはしき桑の若枝は 塵かうむれり
                        釈 迢空
  春の雪海の向うの山に積りいとど青める入海の色
                        植松寿樹
  砥(と)の色の裏の空地(あきち)を見つつをり寒くしなりぬあらがねの土
                       佐藤佐太郎

 

 藤原雅経(飛鳥井雅経)は、和歌を定家に学び、将軍源頼朝後鳥羽院に仕えた、、『新古今集』の撰者のひとり。
 藤原為兼(京極為兼)は、鎌倉時代後期の歌人。歌風は客観的,写生的。斬新で知的傾向の歌もあり,京極歌風の典型という。
 烏丸光広の歌は、定家や西行の有名歌を踏まえていることが見え見え。
 迢空の歌の「いろひ」は美しい色彩、いろどりをさす。

 

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山の夕日