神を詠む(2/9)
大王は神にし坐(ま)せば赤駒の匍匐(はらば)ふ田井(たゐ)を都となしつ
万葉集・大伴御行
霰降り鹿島の神を祈りつつ皇(すめら)御軍(みくさ)にわれは来にしを
万葉集・大舎人部千文
国国の社の神に幣帛(ぬさ)奉り贖祈(あがこひ)すなむ妹がかなしさ
万葉集・忍海部五百麿
天地(あめつし)のいづれの神を祈らばか愛(うつく)し母にまた言(こと)問(と)はむ
万葉集・大伴部麻与佐
天地の神も助けよくさまくら旅ゆく君が家に至るまで
万葉集・作者未詳
榊(さかき)葉(ば)にゆふしでかけて誰(た)が世にか神の御前にいはひそめけむ
拾遺集・よみ人しらず
あめつちの神ぞしるらん君がため思ふ心のかぎりなければ
拾遺集・よみ人しらず
一首目: 「赤駒の匍匐ふ田井」とは、馬を乗り入れると腹まで浸かってしまうような泥田をさす。
三首目: 「贖祈(あがこひ)す」とは、贖物を神にささげて祓い祈ること。これは下句を導き出すための序文といえる。即ち、「あがこひすらむ」を「我が恋すらむ」と解して、妹を「かなし」と感じる心情を表現した。
四首目: 「天の神、地の神、どの神に祈ったら、いとしい母に、また話しができるのでしょうか。」という意味。
六首目: 「榊の葉に木綿を垂らして、いつの世からであろう、榊葉を神のお出でになる清らかな場所として、御奉仕し始めたのは。」という意味。