天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

神を詠む(8/9)

  神の世の遠き言葉聞ゆると思はるるまで男鹿の落日
                         阿部正路
  神持たぬわれは歩みゆく吾が上に日輪がある雲雀のこゑがある
                         小暮政次
  青葉濃き五月みちのく若やかに能をみている神涼しけれ
                        馬場あき子
  霧晴れて頂あをし神様はそんなに高くおいででしたか
                         大寺瀧雄
  歩道橋の上なるひとよそこよりは桜花を透きて神が見ゆるか
                         日吉那緒
  神の泉掬ひし十指を拭ひゆく一本づつに新緑のかげ
                         上野勇
  神様、いま、パチンて、まみを終わらせて(兎の黒目に映っています)
                         穂村 弘

 

 阿部正路は、秋田県秋田市の出身の歌人、文芸評論家、国学院大学文学部文学科教授であった。平成11年の国旗・国歌法制定に際し、衆議院内閣委員会に参考人として出席、法制化に賛成の意見を述べた。
 上野勇一は、下野市吉田村の本吉田出身。戦後、同村内の西坪山に開墾に入った。染色業、農業、新聞販売業などの傍ら、短歌を作った。享年97歳。
 穂村弘の歌は、歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』にある一首。一首の上句は、誰かのせりふのようだが、まみ自身の独り言なのか、分らない。兎の黒目に映っている自分の姿を見ながら、神様にまみの生涯を終わらせてほしいと、まみが祈っているような情景であろうか。
 この一首は、「手紙魔まみ、みみずばれ」という章にあり、この歌の後に、(神様、まみを、終わらせて)パチン という下句をもつ歌が4首も続く。なお歌集の挿絵は、少女の生理・セックスを赤裸々に描いたもので、尋常ではない。

 

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男鹿の落日(webから)