冬を詠む(2/9)
蘆の葉に隠れて住みし津の国のこやもあらはに冬は来にけり
拾遺集・源重之
冬されば嵐の声も高砂の松につけてぞ聞くべかりける
拾遺集・大中臣能宣
はつ雪はまきの葉白くふりにけりこや小野山の冬のさびしさ
金葉集・源経信
冬くれば谷の小川の音絶て峰の嵐ぞ窓をとひける
式子内親王
小野山や焼くすみがまの煙にぞ冬立ちぬとは空にみえける
藤原定家
あさがすみへだつるからに春めくは外山(とやま)や冬のとまりなるらむ
藤原定家
外(と)山吹く嵐の風の音きけばまだきに冬の奥ぞ知らるる
和泉式部
源重之の歌: 「こや」は、小屋と昆陽(こや)を掛ける。昆陽は兵庫県伊丹市の地。
大中臣能宣の歌: 「冬されば」は、冬だから、の意。
源経信の歌: 小野山とは、比叡山の西麓にある三千院や来迎院の背後の山を指している。古くはこの小野山を特定しつつ、同時に左京区小野郷にある他の山々をも漠然と小野山と呼んでいたという。後の藤原定家の歌にもでてくる。
和泉式部の歌: 「まだきに」は、まだその時期でない時に、という意味。