冬を詠む(3/9)
おき明かす秋のわかれの袖のつゆ霜こそむすべ冬や来ぬらむ
新古今集・藤原俊成
冬深くなりにけらしな難波江の青葉まじらぬ蘆のむらだち
新古今集・藤原成通
うちはへて冬はさばかりながき夜になほ残りける有明の月
新勅撰集・二条院讃岐
窓の外(と)に白き八つ手の花咲きてこころ寂しき冬は来にけり
島木赤彦
野の家の屋根の上に干す唐辛子紅(くれなゐ)古りて冬に入るらし
島木赤彦
はたらきて止むときもなきうつせみに寒さきびしかりし冬過ぎむとす
斎藤茂吉
いくたびも火のきゆることかな、ものをおもへば、露西亜たばこの
さびしさよ、冬。 土岐善麿
藤原俊成の歌: 「もう秋も終わると、別れを惜しんで寝ないで・一夜を過ごした袖に置いた露が。霜の結晶になってます。冬がやって来たのですね。」
二条院讃岐の歌: 「うちはへて」は、長々と、ずっと続けて。
土岐善麿の歌: 上句の「火のきゆる」とは、下句の「露西亜たばこ」を指すのだろう。しかし、たばこの火は一度つけると消えないのでは?それとも当時のたばこは吸い続けないと火が自然に消えたのか。