天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

副詞―個性の発現(7/11)

炭俵(webから)

一茶の場合: 「又」「はや」の二種。「又」は蕪村よりも頻度が高い。
「又/また」九句
  又窓へ吹(ふき)もどさるる小てふ哉
  又(また)ことし娑婆塞(ふさぎ)ぞよ艸の家
  又(また)人にかけ抜(ぬか)れけり秋の暮
  蠅除(はへよけ)の草を釣(つる)して又どこへ
  屁くらべが又始るぞ冬篭(ごもり)
  けふの日も棒ふり虫よ翌(あす)も又
  能なしは罪も又なし冬籠(ごもり)
  春もまた雪雷やしなの山
  春立(たつ)や愚の上に又愚にかへる
「はや」七句 (すぐに、早くも、さっさと などの意味)
  振向ばはや美女過(すぐ)る柳哉
  炭もはや俵の底ぞ三ケの月
  春雨やはや灯のとぼる亦打(まつ)山
  炭俵はやぬかるみに蹈(ふま)れけり
  笠紐(かさひも)にはや秋風の立(たつ)日哉
  雀子のはや羽虱(はじらみ)をふるひけり
  けさははやつつき流す精霊棚


展宏の場合: 通常の副詞「すぐ」と二種のオノマトペ「きらきら」「くろぐろ」。
「すぐ」七句
  爪染めてすぐに飽きたる鳳仙花
  明鴉すぐに鶯谷々に
  山吹のあたりにすぐに潦
  笛吹いてすぐにやめけりチューリップ
  すぐ落ちる白いフリルの夏椿
  すぐに止むルラレと跳んで春霰
  枇杷の花新宿門を入るとすぐ 
「きらきら」六句 (小刻みに瞬いたり、いくつもの小さな光がてんでに光る様)
  きらきらと時計をぬけて秋の風 
  炭の塵きらきら上がる炭を挽く
  紅葉かつ散るをきらきら昇る蝶
  きらきらと吉田火祭りをみなの眼
  きらきらとスクランブル交差点秋
  風花やきらきらことば散つて来る 
「くろぐろ/黒々」六句 (いかにも黒く際立っている様子)
  くろぐろと東寺はありぬ春の雨
  桜餅顔くろぐろと男まへ
  九輪水煙黒々とあり初茜
  くろぐろと沖波あがる十三夜
  新涼の富士黒々とありにけり 
  老桜の幹黒々と濡れゐたる