夢を詠う(2)
忘れては夢かとぞ思ふおもひきや雪ふみわけて君を見むとは
古今集・在原業平
むば玉の闇のうつつはさだかなる夢にいくらもまさらざりけり
古今集・読人しらず
なみだがはまくら流るるうきねには夢もさだかに見えずぞありける
古今集・読人しらず
寝られぬをしひてわがぬる春の夜の夢を現になすよしもがな
後撰集・読人しらず
夢よりもはかなきものはなつの夜の暁がたのわかれなりけり
後撰集・壬生忠岑
時のまのうつつをしのぶ心こそはかなき夢にまさらざりけれ
後撰集・読人しらず
夢にだにまだ見えなくに恋しきはいつにならへる心なるらむ
後撰集・在原元方
夢のごとはかなきものはなかりけり何とて人に逢ふとみつらむ
後撰集・源 頼
一首目:現実をふと忘れてしまうと、夢だったのではないかと思います。雪を踏み分けて、お目にかかるとは。
古今集・読人しらずの二首目:なみだを流しながらいつしか眠ってしまったのだ。そんなときには夢も涙に曇ってはっきり見えなかった、という。巧みな切り口だ。
後撰集・読人しらずの一首目:久しぶりに寝て見た夢であなたに逢えた。この春の夜の夢を、現実のことにするすべはないものか、と詠う。後の源 頼の心情に通じる。